新型コロナウイルス感染症が、地域によっては蔓延期を迎えている。厚生労働省も受診の目安を改めるなど、めまぐるしく情勢が動いている。真偽不明のものも含め、おびただしい情報が飛び交うなか、感染症が専門の見坂恒明・同県立丹波医療センター地域医療教育センター長(45)=神戸大特命教授=に、直近の動向を踏まえ、2月17日に続いて、再び「もしかかったら」の前提で話を聞いた。
―「軽症は、自宅で安静」ということだが、自宅で安静にするときに気をつけることは
現状は軽症者も48時間程度の入院が必要で、その後、自宅安静になります。8割くらいの人は、「風邪かなぁ」くらいの感じで終わる。感染が疑わしい人は家族と離れた部屋で、マスクをして過ごす。感染者が触ったところを家族が触れるとうつるので、ドアノブなど、家族が触るところは小まめにふいたり、触れた後に必ず手を洗ってウイルスを洗い流す。空気感染はしないので、部屋の換気は神経質になることはない。安静の目安は14日くらい。それぐらいでウイルスを出さなくなるとされている。
―治療に「アビガン」という薬を投与すると言われている
特定ないし、第1種感染症指定医療機関などでしか使えない、新型インフルエンザなどに備えた特殊な薬を『どうも効きそうだ』ということで、一部の医療機関で使えるようにとの動きがある。HIVの薬も効きそう。取り寄せれば、当院でも投与できる。ただ、いまだに効果があるのかどうかはっきりしていない。また、これらの薬は、肺炎の入院患者に投与するもの。自宅で過ごす軽症者に出すのは、症状緩和のための解熱剤くらい。それぐらいのことなので、受診せず、市販薬を買って、自宅で安静にしていても変わりはない。
―保健所立ち合いのもと、検体を採取するのに変わりはないか
政令で決められており、今のところは変わりがない。もし、蔓延し政令が変わると、保健所を通す必要がなくなるだろう。
―他の疾患の検査と同じようになるということか
そうだ。検査に出しやすくなると、検査依頼が全国的にどっと増える可能性がある。診察時に入院が必要と判断された患者さん以外は、結果が出るまで自宅で過ごす。結果が出るのに数日かかるかもしれない。電話で結果を伝えることも考えている。来院となると、陽性の場合、他の患者さんにうつす可能性があるし、陰性の場合、ウイルスをもらうかもしれない。
―2種感染症指定の丹波医療センターでなくても、開業医でも検査できるようになるのか
今後さらに流行し、おそらく、そうなる。待合室で一緒になった、慢性疾患の定期受診の人にうつすことが懸念される。医師会や各医院で対策を考えられると思うが、熱が出たら即受診ではなく、まず家で様子を見る。受診前に「行きます」と電話で連絡し、マスクがあればマスクをつける。車で受診するなら待合室でなく、車の中で待つ、といった周囲への気遣いが必要になるだろう。
―仮に大流行したら医療体制はどうなるのか
当院は、重症者を診ることになるだろう。軽症者は、開業医や一般の病院で診るようになる。全国的に、まだそこまでは流行していない。
―このウイルスへの評価は変わったか
実際にコロナの患者さんを診ている医師の発信する情報や論文など、最新の情報に触れているが、「そう怖くない」との評価は変わらない。怖い病気は他にたくさんあり、医療者の中ではことさら怖いというほどでなく、「いろんな病気の一つ」と受け止められている。
テレビ番組を見て「よく分からないけれど怖い」と漠然とした不安を感じておられると思うが、感染力もそう強くない。他の買い物客と距離を保って買い物をする。出先でもトイレなどで小まめに手を洗う。アルコールでなくても、ウイルスは石鹸で洗い流せる。熱がある時は出歩かないといった基本的なことに気をつけて過ごしてもらえればと思う。